遡ると、はじまりは葉山の書店だった。 「丁度いまエクリさんの『空と樹と』を購入された方です」と紹介されたのは、國學院大學でフランス語を教えている笠間直穂子さん。 程なく、その年の二〇一六年七月に、國學院大學外国語文化学科が主催する「多言語・多文化の交流と共生プロジェクト」として企画された「旅する音楽」のリーフレットが、笠間さんから送られてきた。出演はパリを拠点として活動するサクソフォンとウードの二人組のユニットkyと、日本のウード奏者がゲストとなっている。 楽器の名も知らなかったウードはもちろん、サックスの生演奏も初めてである。 私が好きなサクソフォンの音色は「アルルの女」間奏曲。薄れてゆく光…
仲野麻紀